Q&A 玉掛け業務の特別教育について
【質問】 玉掛けの資格で 吊り上げ荷重が1ton未満の場合は、特別教育修了者とありますが、どんな教育をどんな資格者が行うものですか?自社で集合教育してもいいのか、その場合の修了証はどうすればいいのですか?
【回答】
ご承知の通り、1t未満の玉掛け業務については、下記の通り安衛法第59条及び安衛則第36条ならびにクレーン等安全規則第222条で事業者は特別教育を行わなければ労働者に当該業務を行わせてはならないことになっています1t未満とは吊り荷の重量ではなく、移動式クレーンの性能(吊り上げ荷重)ですのでお間違いなく!
労働安全衛生法第59条
3 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。
労働安全規則第36条

法第五十九条第三項
の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。
19 つり上げ荷重が1トン未満のクレーン、移動式クレーン又はデリツクの玉掛けの業務
クレーン等安全規則第222条
事業者は、つり上げ荷重が1トン未満のクレーン、移動式クレーン又はデリツクの玉掛けの業務に労働者をつかせるときは、当該労働者に対し、当該業務に関する安全のための特別の教育を行なわなければならない。
教育の科目についても同条2項で次のように定められています。
2 前項の特別の教育は、次の科目について行わなければならない。
 一 クレーン、移動式クレーン及びデリツク(以下この条において「クレーン等」という。)に関する知識
 二クレーン等の玉掛けに必要な力学に関する知識
 三 クレーン等の玉掛けの方法
 四 関係法令
 五 クレーン等の玉掛け
 六 クレーン等の運転のための合図
具体的には労働省告示第118号(S47.9.30)「クレーン取扱い業務等特別教育規定」第5条で次のように定められています。
クレーン則第二百二十二条第一項の規定による特別の教育は、学科教育及び実技教育により行な うものとする。
2 前項の学科教育は、次の表の上欄に掲げる科目に応じ、それぞれ、同表の中欄に掲げる範囲について 同表の下欄に掲げる時間以上行なうものとする。

科 目

範 囲

時 間

クレーン、移動式クレーン及びデリツク(以下「クレーン等」という。)に関する知識 種類及び型式 構造及び機能 安全装置及びブレーキ

一時間

クレーン等の玉掛けに必要な力学に関する知識 力(合成、分解、つり合い及びモーメント) 簡単な図形の重心及び物の安定 摩擦 重量 荷重

一時間

クレーン等の玉掛けの方法 玉掛用具の選定及び使用の方法 基本動作(安全作業方法を含む。) 合図の方法

二時間

関係法令 法、令、安衛則及びクレーン則中の関係条項

一時間

3 第一項の実技教育は、次の表の上欄に掲げる科目に応じ、それぞれ、同表の中欄に掲げる範囲につい て同表の下欄に掲げる時間以上行なうものとする。

科 目

範 囲

時 間

クレーン等の玉掛け 材質又は形状の異なる二以上の物の重量目測玉掛用具の選定及び玉掛けの方法

三時間

クレーン等の運転のための合図 手、小旗等を用いて行なう合図の方法

一時間

上記告示にあるように学科教育だけでなく実技教育を行う必要がありますので、実際に1t未満の移動式クレーンを用意する必要があります。学科のテキストについては下記の特別教育専用のテキストが販売されているのでそちらを利用されるといいと思います。
「玉掛けの業務」 厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課監修
日本クレーン協会 B5判 頁 税込価格 1,700円
また、科目については安全規則第37条により省略が可能になっており、省略範囲については基発第180号(H9.3.21)に示されています。例えば小型移動式クレーン技能講習修了者は移動式クレーンに関する知識や合図の実技について省略可能です。
事業者は、法第五十九条第三項の特別の教育(以下「特別教育」という。)の科目の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該科目についての特別教育を省略することができる。
教育者(講師)については、基発145号(昭和48年3月19日)で下記の通り示されているので、上級資格(玉掛技能講習所持者でよいと思います。適当な講師がいない場合は全国に支部がある日本クレーン協会やボイラー・クレーン安全協会に相談されるといいでしょう。
なお,特別教育の講師についての資格要件は定められていないが,教習科目について十分な知識,経験を有する者でなければならないことは当然である.
教育を行ったら、下記の安全衛生規則第38条で定めるとおり記録を保存しておかなければなりません。記録がないと事故などを起こしたときに有資格者であることの証明が出来ませんので、3年といわずその従業員が在籍されている間は必ず残しておいてください。
事業者は、特別教育を行なつたときは、当該特別教育の受講者、科目等の記録を作成して、これを三年間保存しておかなければならない。
修了証の発行については、特別教育については特に法律で定められていません。技能講習の場合、下記労働安全規則第81条で修了証の発行が定められており、また労働安全衛生法第61条3項で資格を証明する書面を携帯しなければならないとさだめられています。
技能講習を行なつた登録教習機関は、当該講習を修了した者に対し、遅滞なく、技能講習修了証を交付しなければならない。(労働安全規則第81条)
事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う当該業務に係る技能講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない。
2.前項の規定により当該業務につくことができる者以外の者は、当該業務を行なつてはならない。
3.第1項の規定により当該業務につくことができる者は、当該業務に従事するときは、これに係る免許証その他その資格を証する書面を携帯していなければならない。(労働安全衛生法第61条)
ただし教育記録を保存している事業所と違う場所で作業する場合は、上記技能講習の法令に準拠し、いつでも他人に教育の受講を証明するものを携帯させた方が問題がないと思います。修了証は自社でパソコン等で作成しラミュネート(パウチ)加工したもので充分ですが、建設業労働災害防止協会などでも手帳を発売していますので、購入し記入されてもよいでしょう。
最後に一言・・・1t未満の移動式クレーンは非常に少ないです。手軽な通称ユニック車でさえ、2.9tが主流ですので、費用はかかりますが特別教育でなく、技能講習の受講をお勧めします。